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人事労務の法律教室-17 〜月1〜2回の深夜勤務。この程度でも年2回の健診が必要?〜

24時間対応の顧客サポート窓口を設けることになり、社員が交替で夜間勤務をすることになりました。各人、夜間勤務は月に1〜2回あたることになりそうです。深夜業は年に2回の定期健診が必要と聞いたのですが、この程度の深夜業でも対象となるのでしょうか?

月に1〜2回の深夜業であれば年2回の健診は必要ないと思われます。ただし、夜間勤務の日以外にも残業で深夜まで働くことが度々あるのであれば対象となるでしょう。常態として「週1回以上または月4回以上」深夜に働いているかどうかが判断基準になります。

○特定の業務は年2回の定期健診

労働安全衛生法では、労働者を雇い入れたときと、その後1年以内ごとに1回、定期的に健康診断を実施することを企業に義務付けています。 通常の定期健診は、上記のように1年以内ごとに1回でいいのですが、特定の業務に常時従事する人については、この定期健診を配置替えの際と6ヶ月以内ごとに1回実施することになっています。

特定の業務とは、例えば水銀やヒ素など有害物を取り扱う業務や高温作業などがあります。また、「深夜業を含む業務」も対象となります。 ですから、交替制などで深夜の時間帯に働く労働者については6ヶ月以内ごとに1回、つまり年に2回健診を実施する必要があるのです。

○深夜業は健診への悪影響あり

最近は深夜まで営業しているお店や24時間対応のサービスも多いですから、深夜に働くことはそれほど珍しいことではありません。それなのに、ヒ素など有害物を扱う業務と深夜業が同じように扱われることに違和感を感じるかもしれません。 しかし、例え昼間にたっぷり睡眠をとっていたとしても、深夜に働くということは人体の自然なリズムに背くわけですから、健康への悪影響が懸念されるのです。

○残業で午後10時以降も勤務したら?

深夜とは午後10時から午前5時までを指します。一部でも深夜の時間帯に働けば深夜業ととらえることになるため、午後10時30分まで働いた場合でも深夜業をしたことになるのです。では、所定労働時間が深夜の時間帯にあるというわけではなく、たまたま残業で午後10時以降も働いた人はどうでしょうか?こうした労働者にも年2回の健診を実施する必要はあるのでしょうか?

年2回の定期健診は「深夜業を含む業務」に従事する労働者が対象となっています。行政の通達では「深夜業を含む業務とは、業務の常態として深夜業を1週1回以上または1ヶ月に4回以上おこなう業務をいう」と定義されています。「常態として」というのは、シフト制の深夜勤務のように所定労働時間が深夜にある場合だけでなく、恒常的におこなわれている深夜残業も含まれます。普段は深夜残業がほとんどない人が、たまたま突発的な事情により月に4回深夜残業をしたという場合であれば、年2回の健診は必要ないと考えられます。

質問のように、常態であっても月に1〜2回であればこの基準を満たさないので年2回の健診は必要ないでしょう。しかし、夜間勤務の日以外にも月に2〜3回以上深夜まで残業することが毎月あるのであれば対象となってきます。

○療養補償をしていないなら打切補償は無効?

さて、打切補償の話に戻ります。ここで問題になるのが、会社が「療養補償」をおこなっておらず、労災給付を受けている状態で3年経過した場合に、打切補償を支払って労働者を解雇できるのか?という点です。法律では、打切補償の対象は「療養補償を受ける労働者」となっています。労災給付を受けていて療養補償を受けていない労働者は対象とならないのでしょうか?

○深夜業の自発的健康診断とは?

深夜業に従事する労働者については、この月2回の健診の他にも労働安全衛生法に定めがあります。「自発的健康診断」です。 自発的健康診断とは、深夜業に従事する労働者が自分の健康に不安を感じ、次の健診を待てない場合に、自発的に健診を受けて、その結果を会社に提出することができるというものです。結果を受け取った会社は、医師から意見を聴取し、必要に応じて適切な措置を講じなければなりません。この自発的健康診断の対象となるのは「過去6ヶ月間を平均して月4回以上深夜に働いた労働者」とされています。

いずれにせよ月4回以上深夜に働く人については、十分健康に配慮する必要があるということです。

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