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Q:先日、経理部の男性社員と女性社員が結婚しました。しかし、同部署に結婚した二人を置くことを避けるために女性社員に営業事務への異動を命じたところ、本人から移動を拒否されました。法的に問題があるでしょうか?
社内結婚で夫婦が同じ部屋にいると、周囲の気遣いや、本人たちの公私混同により業務に支障が出ることなどを懸念して、いずれか一方に異動を命じることはよくあります。しかし、今回のご相談のように明らかに「結婚」を理由とする人事異動に関しては、男女雇用機会均等法(略称)に照らしても問題があります。
同法第6条では、労働者の配置(業務の配分および権限の付与を含む)について、労働者の性別を理由として、差別的扱いをしてはならないと定めています(第1号)。具体的には、主として次のような場合が差別的取扱いに該当します。
以上のことから、結婚を理由として女性のみ退職を強要したり、不利益な配置転換をしたりすることは禁止されています。また、厚生労働省が公表している「均等法Q&A」では、「職場結婚を理由に一方の性にのみ退職勧奨や配置転換を行うなど、配置等について男女で要件を異なるものとすることは、均等法に違反します」としています。したがって、仮に今回の異動がこれまでの慣習通りであったとしても「結婚」のみを理由とするものであれば、本人の同意がない限り男女雇用機会均等法違反となります。
では、不利益な配置転換(人事異動)となるのはどのような場合かということになりますが、 原則として、職務限定(経理のみなど)を採用した者でない限り、会社は人事権を有しており、広く配置転換を命ずることができます。会社が有効に配置転換を命ずるには、配置転換に関する事項を就業規則などに定めておく必要があります。配置転換に関する定めが合理的なものであれば、就業規則の内容が労働契約の一部となり、会社は本人の同意を得ずとも、配置転換を命じることができ、労働者はそれを正当な理由なく拒むことはできません。
ただし、就業規則に配転・転勤条項の定めがあっても、個別具体的な配置転換命令が、権利濫用に該当すると判断される場合には、その配置転換命令が、無効となる可能性があります。具体的には、
いずれかに該当する場合は、人事権の濫用を問われて違法となり、配置転換が無効となる可能性があります。違法な配置転換を行った場合には、労働者から配置転換の無効を主張されることもあり、その主張が裁判等で認められた場合には、当該労働者を元の職種・場所で就業させなければなりません。ご相談の内容も男女雇用機会均等法に照らせば問題のある人事異動となり、女性社員の同意なく行うことは難しいケースといえるでしょう。